この研究が何の役に立つのか?

自分の研究について、「この研究が何の役に立つのか?」と自問自答したことがない研究者は少ないでしょう。一部の人は、今頃テンパっているでしょうから、何となく鼓舞するようなことを書こうと思います。すべてがFになるの文庫本版のあとがきに、森博嗣さんの研究に対する素敵な台詞が多く掲載されています。

研究が何故役に立たなくっちゃいけないのかって、聞き返す。だいたい、役に立たないものの方が楽しいじゃないか。音楽だって、芸術だって、何の役にも立たない。最も役に立たないということが、数学が一番人間的で純粋な学問である証拠です。人間だけが役に立たないことを考えるんですからね。そもそも、僕たちは何かの役に立っていますか?

研究ってね。何かに興味があるからできるというものじゃないんだよ。研究そのものが面白いんだ。目的を見失うのが研究の真髄なんだ。君が、今、殺人事件に夢中なのと同じ。君だって、殺人が好きなわけじゃないだろう?

研究は役に立たないから面白いんじゃないか、と言う台詞は、裏返せば役に立たないから苦痛なのですが、それにしても勇気付けられるのは間違いありません。研究者は頭が切れるから、逆に役に立たないことが原因で社会的尊厳を見失いやすいのです。
でもね、私が研究の一番好きなところは、純粋な徒競走のように、一秒一秒切り詰めて走るアスリートのように、競争が公平なところです。そこには社会の不条理さが他よりも少ないように感じられます。そして何より、人に感動然とした感動を与えられます。世の中には力技でとんでもなく理不尽な目にあうことがありますが、そういった力から離れたところに研究はあります。それは本当に尊いことなんですよ!
そういった価値は、失くした後で気づくんですけどね(´ー`)