すべてがFになる

森博嗣さんの推理小説です。副題は、"The Perfect Insider"です。
私は本の内容は完全にネタバレすることにしています。確かに、内容について触れないほうが後で本を読む人のためでもあるのでしょうけれど、内容を確認してから読むのも時には良いものです。私の意見とのギャップを測ることも出来るから。というわけで、ネタバレを読みたくない人は、この日記を読まないでください。以下ネタバレ―
この小説を読んだ時に、非常に男性的な小説だと感じました。なぜか?

永遠に女性的なもの
小説に明るい人なら、一度は感じたことがあるかもしれません。男性作家の多くは、永遠に女性的なものを求める傾向が強いです。登場人物の一人である博士は、大天才であり、相当の美人です。彼女が緻密に計画を遂行しているのがあまりにも完璧すぎる・・・永遠に女性的なものへの憧れがそこに垣間見えるからです。
理系
この小説は、コンピュータに明るい人の方が面白いのかもしれません。沢山のテクニカルタームが出てきます。もちろん、それぞれ説明はされていますが、それが完全に自己完結性を有しているかと問われれば、怪しいものです。けれども、余りにも現実の科学と比較してしまってもナンセンスなのです。

本作は、密室から犯人が脱出するために、システムに数年がかりのトロイの木馬を仕込むことから始まります。それはシステムを犯したのではなく、はじめからそう作られていた― 私はインターネットを始めてからまだ日が浅い方で、昔からそういった技術に触れてきたわけではありませんが、同様のトリックを現実に一度だけ体感したことがあります。それは、今になっては、本当に良い体験でした。そのことについて、少し話してみましょう。
当時、掲示板のCGI/perlスクリプトを弄るのが好きでした。特に、不特定多数の訪問者が利用する掲示板やチャットなどは、作ることを考えているだけでも楽しいものです。自分のWebサイトの近くにも、そういったCGI/perlに詳しい人がいて、彼等の作ったプログラムをダウンロードし改良を加えて、自分のWebサイトで使っていました。その掲示板(?)スクリプトの中に、奇妙な時限タイマーが予め仕掛けられたCGIがあったのです。その仕掛けとは、(確か)2002年1月1日だけ、ある指定されたWebサイトに転送するといった機能でした。ソースを良く眺めていた私でも全く気づかなかったのが、今思えば可笑しくて仕方ありません。私達は、まんまと作者に騙されて、『あけましておめでとう』の書き込みを、転送されたWebサイトに残していったものです。(本当はもっと詳しく書きたいのですが、諸事情により、あまり具体的なことを突き詰めて書くことが出来ません:'( )
今はそんな愉快なハッカーは見かけなくなりましたね。